母との秘密の食事
父の居ない夜に行く母との秘密。
父の仕事はホントに多忙でした。
子供心にも常に帰ってくるのが遅い、という印象が今でも残っています。
でも、たいがい酔っぱらって帰ってきてたような気がしますね。
本当に遅くなる日は、連絡があったみたい。
たぶんまだ小学1年ぐらいだと思います。
友達と野山で走り回り、お腹を空かして帰ると、食事の用意をしていない母。
いつもなら、台所で包丁で何かを切る音がしてるのに・・・
僕は「お母さんお腹へった〜今日は何?」と聞くと、
「今日はお父さんが遅いから、ごはん食べに行こうか」
という母。
僕は大はしゃぎです。「お母さん、いつもの所?」そう聞くと、
「そう。いつものところ。みんなには絶対内緒よ。秘密だよ」
僕は大きく頷く。そう、これは母と僕の秘密なんだ!なんか秘密という言葉に妙に反応してしまう子供のころ。たぶん当時の流行りの戦隊ものに「秘密戦隊」などのネームが付いていたからだと思います。
そんな「ドギマギ顔」を見て笑ったように見える母の顔。
そして超田舎の道を母と歩いて降りていく。
僕のメニューは必ず決まっていた!
暗い夜道を超ビビりな僕は、母の手を握り締め歩いていく。
街灯もまだ少なくて、砂利道を音をたて母と歩く。
時おり竹藪の竹がゴーと吹いた風に揺れる。
先に見える自動販売機の明かりが、やけに妖しく見える。
その光に赤色のドラム缶のようなコンクリート製のポストが・・
今にも動きだしそうに・・。
僕の昔住んでいたところの印象は、こんな感じで心に残っています。
例えていえば、トトロのいるような、田舎にいたんですね〜。
やがて、国道に出て、道も「砂利道〜アスファルト」に。
激しく行きかう車が通りすぎる。
やっとのことで、今で言うファミレスに到着。
今はもうないそうですが、当時は大流行りだったと思います。
広々とした店内に入りメニューを見る。
でも、いくら見ても決まってます。食べるものは・・・
「ご注文お決まりでしょうか?」
そんな店員さんに母は
「Aセット一つと、ビール。この子には・・・」
「ハンバーグスパゲッティ!」と僕。
フッと笑う母に店員さんが、
「ではAセット一つにビール、ハンバーグスパゲッティ一つですね」と。
「ハイ。お願いします」と母。
店員さんが居なくなると、母は
「結局また同じね。」とニッコリ。
で、ハンバーグスパゲッティとは、イタリアンスパゲッティの上にドンとハンバーグがのっている贅沢なパスタです。これが大好きでした。
楽のしい食事の時間が、あっというまに過ぎ、僕は母に念押しされるのだ。
「いい?お父さんにも誰にも言っちゃダメ。二人だけの秘密。わかった?」
きっと当時は外食に行くことが、特別な行為だったんだと思います。
食べるのと呑むが大好きな母のストレス発散だったのでしょう。
そして僕は「ラジャ!」と敬礼をする。
そう「秘密は守り通すのが任務なのだ!」と使命感に燃えて。